当科の紹介
胆膵疾患・診療実績
INDEX
胆膵グループ紹介
胆膵グループでは胆嚢・胆管・膵臓領域の疾患の診療を行っております。また超音波内視鏡を用いた生検(EUS-FNA)を施行しており、全身の腫瘍・リンパ節に対する生検も積極的に施行しております。対象としている疾患は急性胆嚢炎、急性胆管炎、胆嚢ポリープ、胆嚢結石、総胆管結石、急性膵炎、膵嚢胞、膵癌、胆道癌などがあります。
胆膵領域疾患の炎症(急性胆嚢炎、急性胆管炎、急性膵炎)では全身に炎症が波及し、敗血症・腎障害・呼吸不全などを合併し重篤になりやすい傾向があります。重症例では救命救急センターと連携し診療を行っております。また胆道癌、膵癌の予後は十分に改善されたとはいえない状況ですが、可能な限り早期発見を行い外科・腫瘍内科・放射線科と連携を行うことで最善の治療を目指しております。
主な対象疾患
1)急性胆嚢炎
●診断
胃痛、心窩部痛、右季肋部痛などが症状です。診断は問診・腹部診察ののちに、腹部超音波検査、CT、MRIなどを用いて行います。大部分が胆石によるものですが、稀に腫瘍・虚血などによっても生じます。
●治療
当院では急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018年版に基づき、ガイドラインにおける標準治療を行っています。急性胆嚢炎の診療は重症度によって細かく分けられています。
①保存的治療(絶食・鎮痛薬・抗生剤など):当科で行います。
②経皮的治療(経皮経肝胆嚢ドレナージ術:PTGBD):当科で行います。
③内視鏡治療(経乳頭的胆嚢ドレナージ:ETGBD):当科で行います。
④外科治療(胆嚢摘出術):消化器・一般外科で行います。
図1:急性胆嚢炎に対する経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTGBD)
図2:急性胆嚢炎に対する経乳頭的胆嚢ドレナージ術(ETGBD)
(急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2018年版 第3版)
2)急性胆管炎(閉塞性黄疸)
●診断
胆汁は肝臓で産生され胆管を下流に流れ、十二指腸にあるVater乳頭から消化管に排出されます。この胆汁の流れが何らかの疾患(腫瘍や結石)によりうっ滞し、細菌感染を生じた状態が急性胆管炎です。大部分は閉塞性黄疸を合併します。 診断は問診・腹部診察の後に腹部超音波検査、CT、MRIなどを用いて行います。より詳細な原因の評価には超音波内視鏡(EUS)を用いることがあります。診断と治療を兼ねて内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)が施行されます。ERCPでは診断に引き続いて治療を行うことができます(胆管結石除去や内視鏡的胆道ドレナージなど)。
●治療
当院では急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018年版に基づき、ガイドラインにおける標準治療を行っています。また術後再建腸管においては、バルーン内視鏡を用いた内視鏡診断・治療を積極的に施行しております。
①保存的治療(絶食・抗生剤投与など):当科で行います。
②経皮的治療(経皮経肝胆道ドレナージ術:PTBD):当科で行います。
③内視鏡治療(内視鏡的胆道ドレナージ術:EBD、ENBD、内視鏡的胆管結石除去術):当科で行います。
図3:胃全摘出術後、Roux-en-Y再建腸管に対するバルーン内視鏡を用いたERCP
(急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン 2018年版 第3版)
3)膵癌
●診断
膵臓に発生する悪性腫瘍で、その多くは病理学的に腺癌です。膵癌のリスク因子として家族歴、糖尿病、慢性膵炎、遺伝性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵嚢胞、喫煙、大量飲酒などが報告されております。診断としては腹部超音波検査、CT、MRIなどに加えて内視鏡検査の有用性が報告されておりEUS、ERCPなどを併用して診断にあたります。
●治療
当院では膵癌診療ガイドライン 2019年版に基づき、キャンサーボード(週1回の消化器内科・消化器外科・腫瘍内科・放射線科医師によるカンファレンス)において、ステージによって治療を決定し、ガイドラインにおける標準治療を行っています。
①内視鏡治療(内視鏡的胆道ドレナージ術:EBD、ENBD、超音波内視鏡下胆道ドレナージ術:EUS-BD、内視鏡的消化管ステント留置術):当科で行います。
①外科手術:消化器一般外科で行います。
②化学療法:腫瘍内科で行います。
図4:膵頭部癌による閉塞性黄疸に対して内視鏡的胆道ドレナージ(金属ステント留置)
(日本膵臓学会編 膵癌診療ガイドライン 2019年版)
内視鏡検査・治療
1)超音波内視鏡検査(EUS)、超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)、超音波内視鏡下ドレナージ術(EUS-BD、EUC-CD)
超音波内視鏡:EUS(Endoscopic Ultrasonography)は内視鏡先端にある超音波装置を用いて超音波画像での診断を行う検査です。消化管粘膜下腫瘍、膵腫瘍、膵嚢胞、胆嚢ポリープなどに広く用いられています。EUSの診断能は非常に高く、CT/MRIよりも小さな病変を検出できると報告されています。またEUS先端から細い針を出すことで組織診断を行うこと(EUS-FNA)も施行可能で、全身の腫瘍・リンパ節などに対して各診療科と密な連携をしながら生検を施行しています。
近年では超音波内視鏡を用いたドレナージ術も普及しており、当院でも超音波内視鏡下の胆道ドレナージや膵嚢胞ドレナージを積極的に施行しています。
図5:膵尾部7mmの腫瘍(Neuroendocrine tumor、G1)に対するEUS-FNA
図6:切除不能膵頭部癌・閉塞性黄疸に対する超音波内視鏡下胆道ドレナージ術
2)内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)
ERCPは特殊な内視鏡を用いて、十二指腸にあるVater乳頭からカテーテルを胆管・膵管に挿管し造影を行う手技です。純粋な検査として行われることは少なくなっており、当科でも95%以上は治療目的(胆管結石除去や胆道ドレナージ)で施行されております。
●診療実績